【対談】激動するマーケティング市場。データで売るか、世界観で売るか。
飛鳥貴雄 氏
株式会社PIALA 代表取締役
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田内広平
PROJECT GROUP株式会社 代表取締役
株式会社PIALAB(株式会社PIALA 関連会社) 執行役・データマーケティング室長
2012年、大学卒業と同時に株式会社Project L.C.(現・PROJECT GROUP株式会社)を創業。ORBIS、品川美容外科クリニック、ビックカメラといった大手クライアントを中心にデータマーケティング/R&Dを提供。グロースハック集団として業界トップクラスの実績を持つ。ベストベンチャー100を2017/2018で連続受賞。

ピアラが定義するマーケティングDXとは。

飛鳥氏と田内
田内広平今回の対談では株式会社PIALAの代表である飛鳥貴雄さんをお招きし、昨今のマーケティング市場が抱える問題や変化について語っていきたいと思います。本日はよろしくお願いします。

飛鳥貴雄 氏よろしくお願いします。

田内広平最近のピアラの動きを見ていると、マーケティングDXを推しているような印象なんですけど注力対象なんですか?

飛鳥貴雄 氏そうですね。今はマーケティングDXに完全注力しています。

田内広平DXについては世間でも色々見解があるわけですけど、飛鳥さん的にはマーケティングDXをどのように捉えてるんですか?

飛鳥貴雄 氏デジタル化は全てデータの集合体であり、データの可視化は大前提。その可視化したデータを基に会社や事業をどう変革させるか。ここまでやってDXだと思っています。でもマーケティングって意外と可視化されていないところが多い。なので今は、この「マーケティングデータの可視化」にとにかく注力している段階ですね。

田内広平なるほど、マーケティングデータの可視化が出来ている会社は市場に殆どいない印象ですけどどうですか?

飛鳥貴雄 氏多くの企業が「部分可視化」で止まってしまっているのが事実だと思います。「オンライン部分は可視化している」という話は良く聞きますけど、実際には部分的にアナリティクスで見ている程度だったりしますよね。私の言う「マーケティングデータの可視化」とは、オンライン・オフライン・お客様育成など全てを含めた一気通貫の可視化なんですよね。

田内広平部分可視化で止まっている企業が大半なのは確かですね。それ以前に「某有名コンサル会社に依頼して、1億円を掛けてデータの計測環境を作ってもらいました」みたいなところから、最終的に「これは何のデータか分からない」「そもそも何のためにデータ収集しているかも分からない」みたいなオチで終わることも多いですよね。大手企業なんかで特に見る光景ですけど。

飛鳥貴雄 氏ありますね。DXという言葉だけが先行してしまったパターンでよくある話だと思います。他にもデータの統合自体がDXになっている場合もあれば、統合すらせず細かいことでDXと言ってしまっているところもありますからね。

田内広平確かに。データ統合についても「コストが高い」「データを統合したところで利益は生まれない」みたいな間違った解釈が市場に広まっている気がするんですよね。

飛鳥貴雄 氏まあ、実際に高すぎる見積もりがよく出ていたりしますからね。しかも、かなり長い期間で。本当はそうじゃないんですけどね。

田内広平その辺は大手システムベンダーや大手コンサルティング会社が作り上げてきた幻想のせいですよね。

飛鳥貴雄 氏大手だとデータ統合はかなり重ために考えられますし、必然的に高額な見積もりが出てきますからね。クライアントたちについても、大手にしか相談しなかったりするので消極的なイメージのままだと思います。

田内広平高額な見積もりもそうですし、「そのデータをどう使うのか」みたいな部分の話はしないじゃないですか。だから先ほど話したように“作っただけ”で終わったりするんですよね。

飛鳥貴雄 氏いや、本当に意味ないですよね。

PRを軸としたマーケティングDX。

飛鳥氏と田内
田内広平これまでマーケティングデータの可視化に注力してきたと言うところで、何か新たな発見などはあったんですか?

飛鳥貴雄 氏それで言うと、サイコグラフィックスをマーケティングに活かすことが有効だと分かってきましたね。

人に何かを勧められたとして、私たちなら経営者仲間に勧められるのが一番刺さりやすいわけですよね。例えば「あのサウナにはよく行く」「毎週あのゴルフ場に通ってる」みたいなことを複数人から聞くと「行ってみようかな」と思うじゃないですか。

田内広平少なくともスマホで調べるとは思いますね。

飛鳥貴雄 氏ですよね。要はそれに近い状況をマーケティングでも作り出すことが重要だということです。具体的には「任意のターゲットに5回接触」というのを1つ指標に置いています。

田内広平5回見たユーザーの興味関心が高いのは、いわゆる単純接触効果の影響ですよね。

つまり刈り取りの方向性としても単純に獲得広告を回すというよりかは、PR広告を先に何度か見せてからの獲得になる。これって言わば「PRを軸としたマーケティング」だと思うんですよ。でも、今のPR業界は「ブランディング」「ブランド認知」みたいな文脈が強くて、獲得という考え方はあまり持っていないと思うんですよね。

飛鳥貴雄 氏なので、ある意味ではPR業界のイノベーションになるとも思っていますね。

田内広平なるほど。それじゃあ、ピアラも会社的に「PRを軸としてマーケティング」に切り替えていく感じなんですか?

飛鳥貴雄 氏うちの場合はPRからやらざるを得ないんですよね。というのもピアラはビューティ&ヘルスジャンルが専門の会社なんですよ。今は薬機法・景表法の規制が厳しすぎて、ほとんど何も言えない状況じゃないですか。

見た目で分かりやすい商品、オーガニック商品、SDGsのようなサスティナブルな商品しか売れず、効果・効能を謳うような一般的な化粧品は売れなくなってきている。だからこそ、これまでとは違うやり方をしなくてはならない。

そこでPRを軸としたマーケティングというか、「ストーリー認知」みたいな側面から売っていこうと舵を切っているという感じですね。

田内広平なるほどですね。最近のユーザー行動の傾向からしても、昔からあるような効果・効能を謳ったLPはもう読んでもらえないですし、逆にブランディング色の強い動画の方がハマったりしますからね。方向性を切り替えるのは正しいと思います。

飛鳥貴雄 氏やはり広告っぽさが無いものがハマりますね。例えば、YouTuberが急に商品を出して紹介したところで取って付けたような感じになるし、視聴者側も「案件動画」として見るようになりますからね。それこそ昔で言う「ステマ」がまた重要になったというか、ユーザーは広告が本当に嫌いなんだなと改めて思いますね。

田内広平それはありますね。最近YouTubeで見たもので言うと美容系商材のPRですね。女性YouTuberが奇麗になる企画なんですけど、色んな美容関連の施設に行くんですよ。その中にさり気なく自社サービスを挟み込んで「このマシーンめちゃ良い!」みたいに感想を言わせてPRすると。

飛鳥貴雄 氏まあ、その方が自然に入ってくるし、お客さんも情報の中から「自分に必要なもの」を選択できるからハマりも良いんでしょうね。広告もプッシュじゃなくて、プルで取る時代だと思います。

田内広平YouTubeプレミアムがサブスクとして成立しているように、プッシュ広告なんてもはや誰も見たくないんでしょうね。

飛鳥貴雄 氏そうですね。かなり厳しいかなと思っています。だからこそビジュアライズだったり、クリエイティブの工夫がより重要になるんだろうなとは思います。

田内広平それがどんな商品なのかパッと見て、使用感だったり、魅力を印象付けられるかどうかですよね。

飛鳥貴雄 氏そうですね。ただ定性的なことについても可視化を進めないと先は無いと思っています。まあ意外に答えは出始めているので、ここから先はさらに面白いことになると思いますよ。

遅れを取り続ける日本のデータマーケティング。

飛鳥氏と田内
田内広平マーケティングデータの可視化において、当然ながら「データの計測環境」は必要になってきますよね。ただ国内のデータマーケティングのレベル感を見ていても、そもそもデータ収集すらしていない会社もあるので先は長いように感じますね。

飛鳥貴雄 氏そうですね。先ほど田内さんがおっしゃられたように、過去に大手コンサル会社が大きくお金を提示していた背景もあって「環境構築=高ハードル」だと誤解している企業は多いと思います。

ただ今はGoogleビッグクエリがありますし、時間もお金も抑えられるようになっていますから、どんな企業でも安価に可視化が出来るようになっていると思います。

田内広平確かにそうですね。でも技術発展の速さに対して、個々のリテラシーは全然追い付いていない気がするんですよ。それ故にビッグクエリみたいな新技術があるのに、環境構築も進められていないのではないかと思うんですよね。

飛鳥貴雄 氏まあ、環境構築以前にデータ管理があまりにも雑な会社だったりすると、情報整理で何も出来ない場合がありますからね。例えば「商品ID」「ブランドID」といったデータを管理する上で必要な情報。これらがゴチャゴチャになってる会社は自ずと環境構築のハードルが高くなると思います。

田内広平あとはデータ量が極端に少ない場合も難しいですよね。

飛鳥貴雄 氏まさにその通りです。私たちもクライアントからデータを頂戴する時は「単純なタグ情報」「客なり」「客層レベル」「郵便番号」「性別」といった基本的なものから、「卸」「出荷」「モール」といったデータまで様々なんですよ。

やはりデータは多ければ多いほど、売上の相関性がいくつも見えてくるので仮説の証明もしやすい。同時により信憑性の高い提案が出せるようになる。逆にデータが少なければ少ないほど、私たちのようなデータマーケティング会社の勝率はどんどん下がっていくんですよね。

田内広平まあ、でもデータでしっかり証明したところで施策を実行させてもらえない場合があるじゃないすか。それこそ「会社の体制的に無理です」みたいなケースは多い気がしてて、実際にプロジェクト進捗が止まることがあるんですよ。

例えば、カートシステムの一部に問題があって数字でも証明されていると。その改修で初月から単月1,000万円規模のリターンが期待できるんですけど、「1年後にカートをリニューアルをする予定だから」という理由で実行してもらえない。でも普通に考えてカートリニューアルまでに1年間あるわけだから、改修しておけば億単位のリターンが出るんですよ。それでも踏み切ってくれないみたいな。

飛鳥貴雄 氏なるほど、やるせないですね。

田内広平そういう意味では「クライアントのデータリテラシーはどうすれば上がるんだろう?」というのが最近の課題ではありますね。

飛鳥貴雄 氏結局、現場にリテラシーの高い人がいくら増えても、経営サイドじゃないのでジャッジまでいかないという問題はありますね。あとはやっぱり自社のシステム部門が自分たちを守ろうとしてる部分も若干あると思います。

田内広平そういう事ってやっぱりあるんですか?

飛鳥貴雄 氏ありますね。こちらの提案に対して「既にやる予定でした」と言われるんですけど、実行までがかなり長い。実際に着手されればまだ良いんですけど、リソース不足を理由にどんどん後ろ倒しになっていくパターンもありますからね。

田内広平確かに大手企業と話していると「社内でやる予定」というのは聞きますね。進捗を聞いても大抵は濁らせた回答しかないですけど。

飛鳥貴雄 氏進捗なんかはシステム部門的に一番言われたくないなので濁った回答になると思いますし、それらしい回答があったとしても「それ本当?」と正直疑ってしまう時もあります。

田内広平やっぱりそうですよね。

飛鳥貴雄 氏でも、やり遂げようとしているゴールはどの部署であろうと近しい場所を目指しているはずではあるんですよ。ただリソースや予算に縛られて実行できない。そしてスパンが長くなってしまうというのが現状だと思います。

田内広平それであれば外注した方が早いだろうし、まずは動かすべきだと思うんですよ。後回しにする方がリスクだと僕は思いますけどね。全体的にデータを取ることの長期的メリットと、それがないと確実に身動きが取れなくなる瞬間が来ることを理解していない印象ですね。

飛鳥貴雄 氏まあ、それが真理ではありますね。

インハウス化の限界と人材問題。

飛鳥氏と田内
田内広平やはり経営者を中心とした個々のリテラシーの底上げが必要だと思うんですよ。そうすれば自ずとサイバーエージェント、セプテーニ、オプトみたいな代理店に頼る必要性も無くなるじゃないですか。

飛鳥貴雄 氏あとは電通、博報堂、ADKあたりもそうですね。Web業界は変化が激しいと言われていますけど、大手代理店の順位については、2000年頃から今も変わっていないですからね。

田内広平だからこそ個々のリテラシーを底上げして、インハウス化をもっと推進すべきだと思うんですよ。

飛鳥貴雄 氏それで言うと、最近だとインハウス化していたクライアントたちがまた戻ってきているんですよね。

田内広平そうなんですか。面白い現象ですね。

飛鳥貴雄 氏市場変化が早すぎるのもありますけど、インハウス化はどうしても井の中の蛙になりやすいという問題があるんですよ。例えば、市場のトレンドに合わせて「今からTikTokの運用を始めよう」と言っても、SEMを自分たちでやっている程度の企業だと難しい。さらに言えば、新しい情報は代理店の方が集まりやすいので頼らざるを得ない。そこが皆さんジレンマになっている部分だと思います。

サーチなんかの簡単なものであれば、もちろんインハウス化しても良いと思います。ただ今は正直、インハウスで漏れなくマーケティングをやり切ることが難しくなっていると思います。一昔から比較するとかなり複雑に変わってしまいましたからね。

田内広平確かに昔のようにただ単純に広告を打っただけでは反響も大して得られないですからね。

飛鳥貴雄 氏そうなんですよ。だから一本槍でやり続けている人たちは特に苦しい状況だと思います。うちに完全に出戻りしたクライアントもいるくらいなので、やはり昔とは違ってそんなに簡単ではなくなったということですね。

田内広平それであれば、大手代理店からエースクラスの人が結構辞めていたりするじゃないですか。そういう優秀な人材をインハウス要員としてもっと拾えば良いと思うんですよね。

飛鳥貴雄 氏一部の企業は拾っているんでしょうけど、それでも総数は足りないんじゃないかと思います。

田内広平まあ、エースクラスの人材は大体が起業しちゃいますからね。

飛鳥貴雄 氏あとデジマ人材って、実際にはそこまで実績が無くても高く買われる傾向があるじゃないですか。だから採用される人材側も資金が潤沢な大手企業やメーカーに行きがち。うまいこと自社に入社してもらえたとして、結局その人が「インハウスの組織まで作れるか」と言うとそれも難しい。やはり特定の部分しか知らない人が多いのが実情なわけですからね。

田内広平例えば、サイバーエージェントで超大手クライアントを担当しているエースチームがいるじゃないすか。そこから抜けてくる人たちが実際にいるわけですけど、みんな独立するばかりで、他企業に引き抜かれて転職した例を1度も見たことがないんですよ。そういう超優秀な人材を拾えないという環境がまず1つ問題だと思うんですよ。

飛鳥貴雄 氏まあ、やっぱりエンジニアもそうですけど、日本企業の多くが給料を払えないという部分でしょうね。粗利モデルが低いというか。

田内広平それであれば優秀な人材だけを集めた代理店を子会社として作れば良いと思うんですよ。それこそ完全成果報酬型モデルで、給料は超高給。運用に関しては、その子会社に下ろすようにすればグループ内で循環するわけじゃないですか。

飛鳥貴雄 氏それもアリなんですけど、昨今だと急にまたブランディングが重要視されるようになって、次元が完全に変わっていますからね。ブランディングに欠かせないクリエイターもほとんどが外部の人材頼みになっていますし、マーケターに限らず今は多種多様な人材を企業に取り込まないと難しいなと思いますね。

技術は進むも考え方は原理に戻るマーケティング。

田内
田内広平経営学者であるドラッガーが「経営者が唯一切り離せない仕事はマーケティングだ」みたいな定義をしていたんですけど、当時は営業戦略も商品戦略もブランディングも全てマーケティングの一環だったわけですよ。

ここ20年の間にマーケティングも色々な形で細分化されてきたわけですけど、また全て統合されてきている事を考えると当時の感覚に戻ってきている感じがするんですよね。

飛鳥貴雄 氏いわゆるマーケティングの原理ですよね。私も本質的に戻ってきている気がします。ただユーザーの行動がデータとして可視化されたこと、計測方法がすごく増えたことは大きな変化点だと思います。ある意味、全てを可視化しながらPDCAが回せるようになりましたからね。

田内広平確かにそこは大きな変化点ですね。

飛鳥貴雄 氏中でも恩恵が大きいのは位置情報とQR決済のデータを拾えるようになったことですね。今ではQR決済もPayPay等のおかげで、年齢層は上から下まで、地域も北から南まで皆使っていますから。

位置情報とQR決済情報だけでも半分以上のデータは可視化できますし、全てのファネルが見れるようになったことは革新的な進歩だと思います。あとはデジタルサイネージがどこまで情報を拾えるようになるか。そこが進めば、さらにシームレスな環境になっていくのではないかと思います。

田内広平そうなるとデータを整理することがまず一番大変なのと、整理が終わった後にどういう手を打つか、さらにはそのデータを読める人材を各ファネルに配置する必要がありますね。

飛鳥貴雄 氏そうですね。データについては媒体やメディア毎に色々変えると管理が難しくなるので、うちでは「ターゲット」「エリア」「時間」「リーチ」といったような形でシンプルに捉えるようにしています。

田内広平「リーチ」を指標に入れているのは正しいと思いますね。というのも某コスメ企業がYouTube広告に注力していた時期があったんですけど、その影響で指名検索のボリュームも3万ぐらいまで上がりましたからね。

飛鳥貴雄 氏リーチの恩恵は検索数として現れますからね。

田内広平そうなんですよ。逆にYouTube広告を停めた途端に検索ボリュームが落ちたので、やっぱり相関性はあるなと思いましたね。

飛鳥貴雄 氏間違いなくあると思います。他にも購入率だったり、ターゲット毎の数字だったり、それぞれ相関性は必ずありますからね。今後は「インフルエンサーによって、バズがどれだけ広がったのか」といったデータも重要になると思うので、将来的には可視化したいと社内で話しているところです。

田内広平なるほど。飛鳥さん的には認知率とCVRも相関するという見解ですか?

飛鳥貴雄 氏CVRは100%相関しますね。例えば、青森県でテレビCMを打ったとすると、青森県在住の40~50代だけCVRが上がったります。他にもトップクリエイターがクリエイティブを担当すると、1日30件だったペースが1日100件にブーストしたまま、その後もあまりペースが落ちなかったり。

田内広平面白い事例ですね。

飛鳥貴雄 氏やはり市場変化で刈り取りが難しくなっていますし、今後はさらにデータを多方面に見て、それぞれの相関性を紐解くことがより重要になってくると思いますね。

田内広平それは間違いないですね。

データで売るか、世界観で売るか。

飛鳥氏
田内広平最近、経営者仲間と「新興アパレルブランドがイケてないよね」という話になったことがあって、ECサイトを諸々見て回ったんですよ。そこで分かったのが、どこもBASEとかSTORESみたいなECプラットフォームでユーザー体験を放棄しちゃってるんですよね。

飛鳥貴雄 氏確かにアパレルはBASE等で始められる方は多いですよね。うちが介入する場合も「ECサイトにテコ入れしましょうか」みたいな提案はよくしています。

田内広平ですよね。ECサイト関連はマーケティング部門が担当することが多いと思うんですけど、UXの観点から言えばブランドマネージャーとかにやらせた方が良いんじゃないかと思っていたりするんですよね。

飛鳥貴雄 氏それは難しいかもしれないですね。というのもアパレル系のブランディング担当の人たちは物事を「感覚」で考える人が特に多いんですけど、感覚の人がシステムや手法について勉強したり、IT側に来ようとはなかなか思わないんですよね。

田内広平なるほど。

飛鳥貴雄 氏私も元々はアパレルブランド出身でそっち系になりたかった人間だからよく分かりますけど、感覚の人たちの会話ってとことん世界観で話していくんですよね。だからデータがどうこうという話ではないんですよ。

もちろんデータを重要視するやり方は合理的だし、透明性も高いので主流ですよね。逆に世界観で売っていくようなやり方は定性的で博打要素も強い。ただ、どちらが正解だとかはやはり無いんだと思います。

実際にアパレルなんかは「世界観で売っていて、服を売ってるんじゃない」と言う人の方が売れたりするんですよ。ここが面白いところであり、難しいところでもあるんですけどね。

田内広平まあ、商材や業界によるんだろうなとは思いますね。

飛鳥貴雄 氏もちろんデータが強いのは確かですよ。ユニクロなんかは「エリア」「サイズ」「気温変化のタイミング」など、すべてデータで見える情報をもとに売っていますからね。

それこそトレンドカラーを使っているのは一部の商品だけであって、結局売っているのは「べーシックなカラー」「べーシックなサイズ」「○○エリアはいつからダウンジャケットが売れる」といったデータを基にしたもの。サイズと機能でやっているから売れるわけです。

例えば、ショッキングピンクのダウンジャケットが100円で売っていたとしても、私たちのような30~40代男性だとまず買わないじゃないですか。だけど、黒のダウンジャケットで1,000円だとしたら多少なりとも買うかどうか迷うわけです。やっぱりベーシックカラーだったり、着回しが利くものの方が消化率は圧倒的に良くなるんですよね。

田内広平そうですね。ユニクロなんかは高品質かつリーズナブルというコンセプトで、ベーシック・カジュアル界隈で覇権を握っているじゃないですか。ユーザーが求める商品品質のベースラインも引き上げられているわけで、この圧倒的な商品力を超えるような新興ブランドもなかなか現れないと思うんですよね。

飛鳥貴雄 氏それはありますね。アパレル市場もコモディティ化している現状がありますし、今は商材にインパクトが無いとグロースハックも相当難しいですからね。

田内広平ですね。現実問題として商品力がLTVのほとんどを決めると言っても過言ではないですから。

飛鳥貴雄 氏いや、本当にそうだと思います。そういった状況もありつつ、商品力を軽視するブランドが多いのもまた事実だと思います。

田内広平まあ、アパレル業界に限った話じゃないですよね。僕らも生き残るために「イノベーションを起こすくらいの覚悟」が必要ってことですね。