WEBサイトのコンバージョンを上げるための手法として、近年ABテストを取り入れる企業が増えています。
ABテストの強みは、何と言っても「多くの予算と工数をかけずに実施できる」という点。基本的に改善を積み重ねていくことが重要なので、大きな工数をかけず、手軽に実施できます。
また、無料で簡単にABテストを実施できるツールはたくさんあるので、導入までの手間や費用を抑えられることも魅力です。
今回は失敗しないABテストを実行するためのポイント、成功事例についてご紹介していきたいと思います。
失敗しないABテストを行うためのポイント
まずABテストを行う上で心得ておきたいのが"AとBは同条件の環境下"でテストを行う必要があるということです。
このテスト環境はあらゆる側面の因子が考えられますが、具体的には以下4つのポイントに留意してください。
- 計測期間を統一する
- ユーザー属性を統一する
- テスト項目は1つに絞る
- 一定数以上のデータ数を集める
1. 計測期間を統一する
まずABテストの基本は計測期間を統一すること、同期間対比で結果を解析する必要があります。
なぜなら、季節やトレンドによってテスト結果は異なるものとなるためです。わかりやすくするため、少し極端な例を出してみます。
・Aパターンを11月にテストした時のCV率の変動=+0.3%
・Bパータンを12月にテストした時のCV率の変動=+2.4%
この場合、Bパターンの方が圧倒的にコンバージョン率は高いわけですが、だからといってBパターンを採用しよう!と判断してはいけません。
当たり前ですが12月はクリスマスシーズン。"ケーキが売れる時期"であり、時期的要因がもろに影響しているため、テスト結果としては正確なものではないのです。
異なる時期によるテスト結果は、統計的には信頼できません。テストの際は必ず同じ期間で、なおかつユーザーはランダムに振り分け正しい効果測定を行うようにしましょう。
2. ユーザー属性を統一する
すべてのユーザーを対象にしてテストを実施するのではなく、同じ条件や似た属性のユーザー同士など、カテゴリーを分類したユーザーごとにテストを実施しましょう。
例えば
・「初めてサイトに訪れユーザー」と「複数回訪問しているリピーター」
・「オーガニック検索から訪れたユーザー」と「リスティングなどの広告から訪れたユーザー」
・「20代」を対象にしたクリエイティブと「40代」を対象にしたクリエイティブ
とでは、ユーザーがクリエイティブから受ける印象や知りたい内容、嗜好が異なる可能性があります。
正確なテスト結果を得るため、ユーザーのカテゴリーをきちんと分けてテストを行いましょう。
3. テスト項目は1つに絞る
自身のサイトを見直す過程で
「ここに掲載する写真・文言は変えたほうがいいのか?」
「エントリーフォームの入力項目が多すぎるのではないか?」
と、あれもこれも気になって、多くの箇所をテストしたくなってしまう気持ちはよく分かります。
しかし、テストしたいことがたくさんあるからといって複数のテストを同時に行ってしまうと、どこの変更がどう結果に繋がったのか、テストの成果が分からなくなってしまいます。
例えば、タイトルとイメージ写真の両方を変えてテストを行った場合、どの変更点が功を奏したのか図ることはできません。
欲張らず、課題と対象を1つに絞ってテストを行いましょう。
また、ほとんど変わらない言い回しや記号の有無でのテストは意味がないのでやめましょう。(初心者がやってしまいがち)
【例】
・「ご注文はこちら」と「ご注文はこちら!」
・「お得」と「おトク」
4. 一定数以上のデータ数を集める
ABテストは比較検証です。
テスト結果の有意性を判定するためには、一定以上のサンプル数が必要となります。
通常、1000セッションほどあるサイトであれば優位性の高いテスト結果を出すことができます。
例えば、月に100セッションしかないサイトでテストを行っても、このテスト結果には信憑性はありません。
結果を信頼するための母数が足りないのです。
そのため、どちらの方が効果的であったかを図るためには、ある程度の数のユーザーがサイトのA・Bパターンのどちらも見ている必要があります。
ABテスト実施の6STEP
1.データの収集
まずは、どこからテストを行うべきかを選定するため、自分のWEBサイトを分析しましょう。
アクセス数が多いのにコンバージョン率が低いページや、コンバージョン率は高いのにアクセス数が低いページなど、改善した時に効果が大きと思われるページを探します。
2.ゴールの設定
「CTAボタンをクリックすること」や、「製品を購入すること」「メルマガに登録すること」など、あなたのサイトで達成したい目標をしっかり設定しましょう。
何を達成したいのかによって、ABテストの内容は変わってきます。
3.仮説を生成する
目標を設定したら、ABテストの実施内容と仮説を立てていきましょう。
ここはABテストを行う上でとても大事なポイントです。
「あれもこれも気になるから、とりあえずテストしてみよう」
「ここを改善したらコンバージョンがあがりそう」
など、感覚に頼ったテストを行ってはいけません。
正しい効果測定を行うために、なぜその改善施策がオリジナルよりも優れているのか、その施策を行うことでどういう結果が出るのか、仮説を立ててテストに臨みましょう。
テストしたい箇所のピックアップが完了したら、次は予想されるインパクトと、実装の難易度の観点から、実行するテストの優先順位を付けていきます。
4.Bパターンのクリエイティブを作成する
ABテストツール(Optimizeなど)を使用し、サイトのクリエイティブを変更します。
例えば、ボタンの色の変更、グローバルナビの順序の入れ替え、ナビゲーション要素の非表示などです。
5.テストを実行する
実験を開始し、ユーザーがサイトに訪問するのを待ちます。
この時点で、サイトにアクセスしたユーザーは、AパターンとBパターンのどちらかにランダムに割り当てられます。
6.結果の分析
テストが完了したら、設定したゴールと照らし合わせ、結果を分析しましょう。
コンバージョン率や登録率が何%上がったのか、具体的な結果をもとに、次の施策では何%上げることができそうか仮説を立て、次の目標を設定しましょう。
参考:Optimaizery(https://www.optimizely.com/optimization-glossary/ab-testing/)
ABテスト事例
$ 75以上の送料無料!の文言を追加したことで注文率・平均注文金額が大幅に向上
【オリジナル】【Bパターン:$ 75以上の送料無料!】
仮説:潜在的なユーザーに対し「 75ドル以上注文したら送料無料!」と無料の配送基準額を追加することで、コンバージョンが向上するかテストしたい
結果:送料無料サービスにより注文率は90%向上、平均注文金額は7.32%向上した
送料無料(インセンティブ)サービスを提供することにより、潜在ユーザーが購入する可能性だけでなく、平均注文金額も増加することが分かりました。
参考:Wishpond
CTAを具体的な文言に変更したことで、コンバージョン率が48%向上
【オリジナル】
【文言変更したBパターン】
結果:「デモを見る」というCTAよりも「商品動画を見る」という文言のCTAのほうが大幅にCTRが高かった
考察:「デモ」という曖昧な表現ではなく「○○の動画を見る」など、CTAを具体的な表記に変更することで、ユーザーは自分がとるべき行動がすぐ理解できるようになり、コンバージョン率が向上したと考えられる
参考:http://whichtestwon.com/archives/24510
CTAの表示をイラストからテキストに変更したことで、クリック率が49%増加
【オリジナル】【テキスト表記に変更したBパターン】
仮説:「カートに入れる」というCTAボタンを、カートのイラストではなくテキストに変更することで、ショッピングカートにアイテムを追加する人の数が増えるのではないか
結果:イラストからテキストに変更したCTAボタンにしたことで、CTRが49%増加
ユーザーが次に自分がとるべき行動が分かるように、直接的かつ明確な文言を記載したCTAを設置することが効果的であるということが分かりました。
参考:TASTY BLOG
背景に画像を追加することで、コンバージョン率が17.64%向上。
【写真背景パターン】
【白背景パターン】
仮説:サイトの背景に写真を使用した場合と、空白の背景ではどちらの方がコンバージョン率が高いかテストしたい
結果:白い背景パターンのコンバージョン率は 7.68%だったのに対し、写真を背景にしたパターンのコンバージョン率は25.1%と圧勝
写真を背景にすることで、何のサイトかユーザーが視覚的に認知することができるようになり、コンバージョン率が向上したと考えられます。
参考:TASTY BLOG
モバイルに最適化されたランディングページを作成したことで、コンバージョン率256%向上
仮説:スマートフォン専用のWEBサイトを作成することで、コンバージョン率は向上するのではないか
結果:スマートフォン専用のWEBサイト作成後、コンバージョン率は256%増加
モバイルに合わせた適切なWEBサイトにすることで、ユーザビリティが向上し、コンバージョン率が向上したと考えられます。
参考:TASTY BLOG
まとめ
いかがでしたでしょうか?
きちんと目的と対象を絞ってABテストを実施することで、無駄な労力・時間を費やさずに効果を上げることができます。
ABテスト成功のポイントは、改善と効果測定を繰り返す以外にありません。
重要なのは、成功か失敗かではありません。
自分の立てた仮説がどう結果に反映されたのかを定量的に分析し、そこから学び、仮説と結果のギャップを埋めていくことが大切なのです。
ぜひ今回ご紹介した内容を参考にABテストを実施して、あなたのサイトのコンバージョン率を向上させていってください!