「営業」というと、何軒も会社を回って商談をするというイメージがあるのではないでしょうか?
ネットが普及した現在、そのような外回り型のセールスだけでなく、社内完結型のセールス(インサイドセールス)を積極的に導入する企業も増えてきました。しかし、どのような効果が見込めるのかわからなければ自社に取り入れることもできません。
今回の記事では、商談の効率化と企業のさらなるスケールアップを目指す方法としての「インサイドセールス」について詳しく解説していきます。
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、アメリカで生まれ、のちに世界中に広まった内勤型営業のことをいいます。
アメリカは国土が広いことから、現地に足を運ぶということが難しかったため、昔から電話での営業が盛んに行われていました。ネットが普及した現在、電話以外にもメールやさまざまなオンラインツールを利用しての営業が増加しています。
このように遠隔で見込み客に働きかける営業の仕方のことをインサイドセールスというのです。
フィールドセールスとインサイドセールスの違い
インサイドセールスが「内勤型営業」であるのに対し、フィールドセールは「外勤型営業」のことを指しています。
フィールドセールスは、営業マンが取引先を何社も回って交渉するという、昔から広く行われている営業方法です。
フィールドセールスの場合、一日で回ることができる会社や顧客数は限られています。また、時間がかかるわりに交渉できる数が少ない、営業活動を行う人材の確保が大変、といったデメリットがあり効率が悪い営業方法といえるでしょう。
一方、インサイドセールスであれば、社内にいながら数多くの会社と交渉することができ、しかも距離的なロスはまったくありません。このような効率の良さ、豊富なWEBツールの登場などから、近年のマーケティングはインサイドセールスが主流になってきているのです。
インサイドセールスのやり方
インサイドセールスの導入の仕方は会社によってさまざまですが、大まかに分けて3種類の導入方法があります。
- 営業活動を全面的にインサイドセールス化する
- 営業活動の一部をインサイドセールス化する
- 見込みの低い顧客に対するナーチャリング(育成)
営業活動を全面的にインサイドセールス化する
これは営業活動として行っていることすべてをインサイドセールス化する方法です。
価格が安く、商談もそれほど難しくない商品を扱っているのであれば、全面的なインサイドセールスでも受注が可能になるでしょう。
営業活動の一部をインサイドセールス化する
営業活動として行っている一部だけをインサイドセールス化させる方法です。
価格が高く、商品の説明も難しいような商材を扱う場合は、インサイドセールスとフィールドセールスを組み合わせて効率よく営業を行います。
見込みの低い顧客に対するナーチャリング(育成)
見込みの低い顧客だけに対してインサイドセールスを行い、見込み顧客をナーチャリング(育成)していく方法のことです。
インサイドセールスのメリット
近年の営業方法は、フィールドセールスよりもインサイドセールスが主流になりつつありますが、その利用はやはりインサイドセールスのメリットの多さにあるからでしょう。
インサイドセールスのメリットには、さまざまなものがありますが、ここでは特に重要なメリットを3つご紹介していきます。
- 少人数でセールスができる
- リード顧客への効率的な対応が可能
- 新人育成や教育が短期間で済む
少人数でセールスができる
すでに説明したように、フィールドセールスでは1日で商談可能な件数は限られてしまうのが一般的です。また、時間・距離的にもどうしてもロスが出てきてしまいます。
一方、インサイドセールスでは、電話やメール、WEBツールなどを使えば1日の何十件も商談することが可能です。外を回って1日5件の商談を行うのと、社内で1日30件商談をするのとでは、どちらが効率的かは明白でしょう。
商談回数が格段に増えると、少人数でも多数の成果をあげやすくなります。また、少人数での運用は業務の効率化を図れるだけでなく、人件費を抑えることにもつながるのが特徴です。
リード顧客への効率的な対応が可能
インサイドセールスでは、大量のリード顧客にアプローチすることができるので、リードのナーチャリング(顧客育成)にも大きな効果を発揮します。
インサイドセールスの場合、遠隔によって継続的な情報発信と交渉が可能です。そのため、最初の段階で成約できなくても、長い目で見ればフィールドセールスよりもずっと効率的にナーチャリングを進めることができます。
インサイドセールスによるナーチャリングは、見込み客の欲求や希望、目的、サービスへの関心など、さまざまな要素を長期的に分析・精査することが可能です。そのため、それだけ成約率を高める施策を実行しやすくなるということです。
新人育成や教育が短期間で済む
インサイドセールスは社内での業務になるため、セールスや顧客とのコミュニケーション、交渉力などの面で、新人育成を短時間かつ効率的に行うことができます。
フィールドセールスであれば、いきなり対面での商談というのは新人には難しいものがあるのではないでしょうか。また、商談の場に一緒に同席させて教育するといっても、一日の商談回数には限りがあります。
社内だけの営業であれば、より多くの商談と経験を重ねることが可能で、経験の足りない新人に対しても先輩社員が隣でサポートすることが可能です。新人の側から見ても、社内の先輩が常にサポートしてくれる態勢にあれば、安心して商談に挑戦することができます。
インサイドセールスが適したシーン
サブスクリプション型のビジネスモデルの場合、少額ビジネスでありながら営業活動や顧客との取引回数がかなり多くなるでしょう。
そのため、社内での電話・メール・WEB会議システム等を頻繁に活用できるインサイドセールスが向いています。
サブスクリプション型のビジネスモデルは、いかに顧客から継続課金してもらえるかがポイントです。顧客からの要望やクレームに素早く対応する、新しい情報やアップデートを頻繁に発信し続ける、といったこともインサイドセールスであればスムーズにこなすことができます。結果的にそれは、解約率を抑えることにつながるでしょう。
インサイドセールスが適さないシーン
インサイドセールスが適さないのは、「対面での営業が重要視されるビジネス」です。
数多く営業数をこなすよりも、一つ一つの営業における人間関係と信頼性の構築が重要になるビジネスでは、インサイドセールスは向きません。
とりわけ高額商品を扱うビジネスでは、電話やメール、WEB会議システム等ではなく、実際に顔を合わせての商談が重要視されるケースが多くなります。単純に顧客側が「遠隔での商談を望まない」こともあるので、柔軟に対応しなければいけません。
自社が展開するサービスの特徴や内容、または商談先の意向や傾向などを踏まえて、インサイドセールスとフィールドセールスのどちらがベストかということを見極める必要があるでしょう。
インサイドセールスの導入事例
インサイドセールスの効果で特に顕著なのが、顧客へのコンタクト時間の増加と、それに伴う成約率の上昇です。
ここでは、インサイドセールスを導入して成功を収めた事例として、国内企業2つ、海外企業1つをご紹介します。
株式会社ベネフィット・ワン
株式会社ベネフィット・ワンは、官公庁や企業への福利厚生サービスを提供する企業です。
インサイドセールス導入前は商談件数に限度があったものの、インサイドセールスを導入してからは商談件数が大幅に増加しました。
年間で500件近くの契約をインサイドセールスのみで達成するという結果を出しています。インサイドセールスで顧客とのコンタクト時間やサポート回数が増えたことにより、フォローアップが充実し、解約率の減少にもつながっているようです。
株式会社KR.company
株式会社KR.companyは名古屋市を中心にITソリューション事業、オフィスソリューション事業を展開する企業です。
名古屋市内でフィールドセールスのみで商談を行うと、1日5件の限界であったこと、さらに時間だけでなく、交通費もかかるということでインサイドセールスの導入を決めました。
その結果、商談件数は以前の2倍以上、受注数も3~4倍に伸びたのです。さらに移動する必要がなくなったことで、愛知県のみだった商圏が愛知県を含めた10エリアに拡大しました。
カリフォルニア損保
カリフォルニア損保は、消防士や保安官、看護師などの職業に特化した米国の保険会社です。
米国の保険会社のセールスは、昔から訪問営業と見込み客に対する電話営業が一般的でした。カリフォルニア損保では、電話によるコンタクト率の上昇と精確な見込み客の把握のためにインサイドセールスを導入したのです。
その結果、電話でのコンタクト時間は年間4000時間を超え、さらに顧客のデータ分析で見込み客に優先順位を付けて営業を行ったことで、見積書提示率が40%、成約率が23%アップしました。
まとめ
人手不足、移動時間、人件費、営業・商談の効率化、新人育成など、さまざまな点から見てもインサイドセールスの導入には多くのメリットがあるといえます。
営業の仕方、働き方というものは、年々移り変わっていくもので、今後インサイドセールスによる商談がさらに浸透し、ごくごく一般的なものになる可能性は十分にあるでしょう。
マーケティングの成功の秘訣は、なによりも時代を先取りして最先端の考え方を取り入れることです。フィールドセールスによる会社のスケールアップに限界を感じている場合は、インサイドセールスの導入を検討してみましょう。