大手企業におけるデータマーケティング
瀧元俊和 氏
元・丸井グループ常務執行役員/現・PROJECT GROUP株式会社顧問。
早稲田大学政治経済学部を卒業後、1982年に株式会社丸井グループに入社。同社のクレジットカード事業において多大なる貢献を果たした人物。デジタル技術と顧客目線に立った戦略を展開し、後発でありながらエポスカードは国内クレジットカードの中で利益率No.1を誇る。

田内広平
PROJECT GROUP株式会社 代表取締役。
2012年、大学卒業と同時に株式会社Project L.C.(現・PROJECT GROUP株式会社)を創業。ORBIS、品川美容外科クリニック、ビックカメラといった大手クライアントを中心にデータマーケティング/R&Dを提供。グロースハック集団として業界トップクラスの実績を持つ。ベストベンチャー100を2017/2018で連続受賞。

クレジットカード会社におけるデータ活用の実情

瀧元氏と田内
田内広平今回の対談では、丸井グループの元常務執行役員であり、同社クレジットカード会社「エポスカード」の元社長。現在はPROJECT GROUP株式会社の顧問をして頂いている瀧元俊和さんをゲストに「大手企業のデータマーケティング」について語っていきたいと思います。

大手企業におけるデータマーケティングの実情、それにまつわるデータ活用状況。その他、エポスカードの社長時代の話など、色々伺っていければと思っている次第です。本日はよろしくお願い致します。

瀧元俊和氏どうぞよろしくお願いします。

田内広平早速ですが「大手企業のデータ活用実情」についてどうお考えでしょうか?

瀧元俊和氏大手企業とはいえ、データ活用についてはどこも苦戦しているような状況です。例えばクレジットカード会社は「利活用できるデータを大量に持っている」と思われがちなんですけど、これがなかなか活用し切れないのが実情なんですよね。

田内広平どういうことですか?

瀧元俊和氏結論から言うと、クレジットカード会社が保有しているデータは「どこで購入したか」といったような大雑把なものでしかないんですよ。

例えば、イオンのショッピングモールでカード決済した人から分かるのは「イオン○○店で購入した」というデータのみ。そこで食品を買ったのか、服を買ったのか、家具を買ったのかは全く分からない。これはネットショッピングも同様で「Amazonで購入」としかクレジットカード会社は把握できないわけです。

Amazonとクレカ会社のデータ活用領域

田内広平それだとデータ活用するにも幅が極端に狭くなりますね。

それこそ顧客の購買データを活用した成功事例で言えば、中国のAlipayやWeChat Payなどがあるじゃないですか。新規店舗を出店する際に購買データからその地域に住む人々の嗜好を予測して、嗜好に合わせた品揃えをすることで非常にロスの少ない出店を成功させたみたいな。

瀧元俊和氏ありますね。日本国内でも同様のことをやりたいがために、電子マネー企業の皆さんが次々と参入してくるんですけど、日本は潜在的に現金やクレジットカードを使う文化がまだ浸透している。結果的にまだ思ったような成果を出せていないんですよね。

田内広平確かにそんな印象ですね。

空回りを続けるデータ活用

瀧元氏
田内広平そういった背景から察するに、クレジットカード会社はデータ活用を諦めているんですか?

瀧元俊和氏いや、全然諦めてはいません。現状なりに様々な試みは日々行われています。ただ「上手くデータを活用できている」とは決して言えない状況ですよね。

例えば、某カード会社さんが私に色んなレコメンドをしてくれるわけです。そのレコメンドというのが、私のカード利用履歴から「銀座の高級和食店を利用してる」と分析したものなんですけど、私としては内容がミスマッチなんですよ。

というのは、私が行っている和食店というのが「なかなか予約の取れない人気店」なんですけど、レコメンドは逆に「予約の取りやすいお店」を沢山勧めてくるんですよ。一見、理にかなった内容なんですけど、私としてはいい迷惑。

田内広平予約を取ってまで特定の和食店を選んでいるのは、こだわりがあるからであって、和食店なら何処でも良いわけではないと。

瀧元俊和氏そういうことですね。ちなみに「レコメンド店」と「カード会社」は契約関係にあって、お客さんがそのお店を利用したら、カード会社に一定のペイバックが発生する仕組みになっているんですよ。この契約関係にあるお店の中から、私の嗜好に合うようなお店をレコメンドするんですけど、そこには大きな乖離があるわけです。

というのも、人気店はそもそもカード会社と契約を結ばずともお客さんが来てくれる。つまり、カード会社は人気店と契約関係になれないわけです。その結果、私が求めているようなお店をレコメンドに出せないのでミスマッチが起きてしまうと。

田内広平なるほど。僕が思うに、ユーザーの満足度を上げるためのレコメンド機能であって、ここに集客目的の広告を絡めてはダメなんじゃないですかね。

瀧元俊和氏そうですね。ただこれが難しい話で、逆に人気店をレコメンドしたところで「行きたいのは山々だけど予約が取れないんだよ」という話にもなっちゃうと。この辺でカード会社はかなり行き詰まっていますね。

田内広平なるほど、そういう側面も確かにありますね。

この辺りについては楽天が上手ですよね。無駄にレコメンドはせずに楽天ポイントで還元して、楽天モールでの購入に誘導するというエコシステムが形成できてる。ユーザーも自由度の高いポイントで還元されているのでメリットに感じるし、カードの利用促進にもしっかり繋がっているわけです。

瀧元俊和氏おっしゃる通りですね。

データ分析によって分かった傾向

田内広平データ活用という意味では難しい状況にあるとは思いますけど、これまでにデータ分析によって分かった傾向などはあったんですか?

瀧元俊和氏地域や店舗によってクレジットカードによる利益率が全く異なるということですね。こういった言い方は良くないんですけど「高齢者が多数来店する店舗」であるほど、クレジットカードによる利益率が低いわけです。

やはり高齢者と比べると、若年層は消費欲求が断然強い。さらに欲求に対して収入は少ないことから、分割払いやリボを活用して頂ける方が多いんですよ。

これが年齢とともに収入が増えて、子育てが終わった40~50代なんかになると収入は十分、貯金もあるので金利が発生するようなサービスは利用されない。こうなるとカード会社的には儲からないんですよね。

年齢別カードローン利用率
出典:お金を借りる即日融資ガイド110番

田内広平なるほど。むしろ小売業界では「40~50代の利益率は高い」と言われていますし、一般的には高所得層は囲い込み対象なんですけど、これがクレカ業界だと完全に逆なんですね。

瀧元俊和氏そうですね。やはり40~50代の方よりも、若年層の方が利益率は高くなる傾向にあります。

田内広平ちなみにエポスカードは与信が緩くて、それこそ審査落ちしそうな人も比較的に通るイメージなんですけど、これは若年層の確保を含め、意図的なものなんですか?

瀧元俊和氏そうですね。与信が厳しくてカードを発行できない層や、まだ所得が少ない若年層に対して「出来るだけカード発行し、金融サービスを提供する」という部分は使命としてあります。

ただし、この辺については闇雲に若年層を確保したいがためではなく、元々丸井が「月賦百貨店」であったという部分が大きく影響しています。

田内広平というと?

瀧元俊和氏丸井は所得の少ない若年層に対して、ファッションを割賦販売していた時代があったんですよ。つまり「若年層の返済に関するデータ」はもとより沢山持っていたわけです。だから、10人いたら10人全員に発行するわけじゃない。「こういう方は発行できない」というデータは元々あったんですよ。

要するに他のカード会社が十把一絡げに与信落ちさせていた層の中から、比較的に安全な層をデータ的に抽出できたということです。

※月賦百貨店(げっぷひゃっかてん):割賦販売の小売店のこと
※割賦販売(かっぷはんばい):分割支払を条件とした販売方式のこと

丸井
出典:ジャパンアーカイブス

田内広平なるほど。丸井のルーツは月賦百貨店で、その時代に集まったデータを活用したわけですね。

瀧元俊和氏そうです。丸井も創業から95年ぐらいになるのかな。初めは家具やスーツを分割で売るという商売がメインでした。

エポスカードの誕生秘話

瀧元氏
田内広平やはり企業成長には流れがありますよね。うちも元々は受託開発のソフトウェア会社だったんですけど、普通なら行き着かないであろうグロースハック/データマーケティングという分野に流れ着きましたから。

ちなみにエポスカードが誕生するまでに、どんな経緯があったんですか?

瀧元俊和氏エポスカードの前身である「マルイカード」の話からする必要があるんですけど、時代は遡って80年代にDCブランドブームが起きたんですよ。「BIGI」「ニコル」「ヨウジ・ヤマモト」などのファッションを若者が物凄く買いたがったと。その流行のDCブランドをいち早く展開したのが「月賦百貨店の丸井」だったんですね。

BIGIのスーツで当時10万円ぐらいの高級品。そこを丸井であれば分割払いで買えるので、若い方々に飛ぶように売れたわけです。さらにバブルの影響も後押しして、1991年頃には営業利益で600億円を記録するぐらい順調だったんですよ。

※DCブランド:日本のアパレルメーカーによる高級ファッションブランドの総称。DCは「デザイナーズ&キャラクターズ」の略称とされている。

マルイカード
出典:流通ニュース

田内広平営利600億円は尋常じゃない数字ですね。

瀧元俊和氏その当時は「ファッションの丸井」という言い方をされていたくらいで、経営方針も「ファッションの丸井でいこう」という風に方向転換するんですけど、直後にバブルが崩壊しちゃうと。

当然ですけど給料が下がれば高級品を買う余裕は無くなる。そうなると丸井の売り上げも急降下、ファッションブランドで固めていた店舗も全く売れなくなってしまったわけです。

そこから「ヤングファッションはもう駄目なんじゃないか」という結論から、団塊の世代や郊外に住む人たちを対象に、16号線沿いの店舗を強化して「ファミリー向け商品を多数扱っている丸井」を作った。ただ、これもバブル崩壊後だからそんなにうまくいかない。

いよいよ2000年ぐらいになるともう会社が危ない。マルイカードも「丸井でしか使えないクレジットカード」だから金利収益も入ってこない。ここでやっと「特定の店舗でしか使えないカードなど今時やっていけない」という結論に至ったんですよね。

そこから「地球の裏側でも使えるクレジットカード」ということで、2003年にプロジェクトが発足。タイミングとしては相当遅いんですけど、2006年に「エポスカード」が誕生するわけです。

田内広平壮絶なストーリーですね。ちなみにプロジェクト発足から、エポスカード誕生までに3年と事業の垂直立ち上げ期間としてはかなり長い方ですよね。

瀧元俊和氏やはり「地球の裏側でも使えるクレジットカード」というのはシステム規模が全然違うわけで、VISAさんとのライセンス交渉だったり、システム構築に相当の時間が掛ったんですよね。

田内広平なるほど。確かにクレジットカードが旅行先で使えなくなったら大変ですもんね。

EC事業とエポスカードの連携

マルイウェブチャネル
田内広平ちなみに丸井はEC事業も展開していると思いますが、エポスカードと連携させたような取り組みはしているんですか?

瀧元俊和氏エポス会員の優遇等はかなりやっています。ただ、それ以前に「丸井のECサイトにお客さんが定着しない」という大きな問題があるんですよね。

例えば「10%OFFの日」などであれば丸井のECを利用してもらえるんですが、それ以外は「ZOZO・Amazon・楽天で買う」といった傾向にあって、なかなかお客さんが定着してくれないんですよ。これは他の百貨店ECも同じような課題を抱えてるんじゃないですかね。

田内広平取り扱うジャンルの数だったり、キラーコンテンツが乏しいという部分は考えられますね。ただ、これは百貨店固有の問題っぽい印象はあります。

瀧元俊和氏丸井のECは品揃えの中心がよそ行きのファッションなんですけど、やはりZOZOの方が品揃えは沢山あるし、レコメンドも非常に優秀なのでお客さんもZOZOに流れてしまうと。

データの利活用という意味でも、Amazonさんなんかはお客さん一人一人の購入データを持っているわけですよね。購入傾向が詳細に分かるのでレコメンド精度も当然高い。私自身も使っていますけど、レコメンド内容もそんなに外れてないので嫌な思いもしませんからね。このレコメンドを代表する機能がキラーコンテンツ化している構造です。

なので、やはり「お客さんが何を買っているか」「どういう趣向なのか」が分かるぐらいの詳細なものでないと、データの利活用はなかなか難しいと改めて感じます。

カード利用額によるユーザーセグメント

田内広平僕が思うにクレジットカード会社が保有するデータでも、客単価の高い顧客をある程度はセグメント化できると思うんですよね。

例えば、某企業のお客さんはダイエットのために入会費として数十万円、更に3ヵ月間で平均数万円をダイエット関連グッズに使うというデータが出てるんですよ。

こういった高額商品をカードで一括決済するような人たちは、高所得であることが確定しているので、セグメント化してマーケティングに活かせるはずなんですよ。

瀧元俊和氏確かにそうですね。実際、カード年間利用額が物凄い人は沢山いますからね。

田内広平それこそ高所得者向けに「ハイエンドユーザー専用のECサイト」などを作って、販促すれば良いのにとか思ったりしますけどね。

瀧元俊和氏それは一部あると思います。百貨店の高級時計売り場に来たお客様に、高級外車の試乗会を案内したら物凄いヒットしたという話を聞いたことがありますからね。

田内広平やはり「どのデータに対して、どのようなアプローチが適切か?」という問いが重要ですね。

日本市場におけるデータマーケティング問題

田内
田内広平最近、大手フィットネス企業の案件に新たに参画したんですけど、データマーケティングについては全然やり切れていないんですよ。それこそ集客だけして、その後は何もしていないような状況で非常に勿体ない。

データは集客後に集まるものにも関わらず、そこで分析が出来ていなければ「分析をしている」とは言えない。さらに言えば、分析・解析すべきデータに触れていないので、当然ながら社内でデータの専門家も育たない。外部から採用するにも解析ツールを使いこなせて、ビッグデータを扱える人材なんて基本的にはいない。

こういう理由が相まって、市場全体としてデータ活用が上手く行ってないと思うんですよね。

瀧元俊和氏なるほど。単一サービスを提供をしているような会社であれば、データの活用方法は沢山あると思うんですけどね。百貨店やカード会社はデータが沢山ある一方で、売っている商品も様々だからどうやって活用するかで道筋が見えてないわけですから。

名ばかりの「マーケティングアドバイザー」

田内広平実際問題として大手企業はデータをどのように扱っていくつもりなんですかね。

瀧元俊和氏昨今ではDXが話題に挙がっていることもあって、外部アドバイザーと契約など、各社注力している部分だとは思います。ただ成功してる会社はあまり見たことが無いですね。

田内広平そうですよね。それに「マーケティングアドバイザー」とは名ばかりで、表面的なことしかやらないパターンが多いですからね。

僕に言わせれば「データを出せば終わり」ではなく、一番泥臭い分析・解析をこなして初めて意味があると思うんですよ。それこそクライアント要望で算出に相当な手間が掛かる分析とかもありますけど、関係者全員が「クライアントの実験」に付き合う覚悟を持って並走するしかないと思います。ただ工数が尋常じゃなく重たいですけどね。

瀧元俊和氏やはり、具体的でなおかつ明確な実績を証明できるかが相手を説得させる上でも必要なことだと思います。

大手企業の場合、過去に色んな分析を試みてはいるんですよね。しかし「大した効果が得られなかった」「費用対効果が合わなかった」といった感じで終わってしまった案件が山ほどあると思うんですよ。

だから「徹底して検証したところ、このような結果になりました」「費用対効果もあって、成功に繋がりました」みたいな事例がいくつも挙げられれば、大体の大手企業も「じゃあ、やってみるか」という話になると思うんですよね。

田内広平そこで最近考えてるのが、完全返金保証なんですよ。過去の実績数値から「売上いくら以上のプロダクトで、テストを〇回以上の数打てば〇%の確立で当たる」ということは分かっているので「〇回以上のテストを実施させてもらう」を条件にやろうかなと。

PROJECT GROUP株式会社

瀧元俊和氏それは大手企業としてもやりやすいかと思います。何らかのサービスと契約するにも上層部から「費用対効果は?」「効果が出なかった時はどうするの?」みたいな事を言われるので、担当者は尻込みしてしまうわけですよ。

「費用がこれだけ掛かる」という話を振れば「僕だけでは判断できないので上と相談します」となって、そこで止まっちゃうと。その点、仮に多額を払うことになっても「失敗時は返金される」という前提があれば、上にも通しやすいですからね。

データ分析を取り巻く理想的な環境とは

瀧元氏
田内広平瀧元さん的に、データ分析を取り巻く環境がどのように変われば良いと思っていますか?

瀧元俊和氏世間的に「個人情報を出さない」という風潮ですから、難しいとは思うんですけど「お客さまの了解を得た上であれば、ユーザーデータを活用できる」という形になれば理想的だと思います。

それこそカード利用履歴だけでは分からない趣味嗜好の部分が補えれば、趣味嗜好別にお客さまを何百種類、何千種類というグループに分けて、それぞれに的確なレコメンドが出来るようになりますからね。

田内広平中国が既にやってますけど、日本だと難しそうですね。

瀧元俊和氏50代以上の方々は個人情報について異常なアレルギー反応があって難しいと思います。ただZ世代ぐらいになると物心が付いた頃からネットワークに繋がった生活が普通であって、個人情報の開示についても抵抗感があまり無いわけです。

そういった若い方々が世の中心となり、趣味嗜好に合うレコメンドが「便利」と感じてもらえれば、可能性はあるんじゃないかと考えています。

※Z世代:1990年代中盤~2000年代終盤までに生まれた世代のこと。

田内広平確かにそれはありますね。

例えば、Z世代で流行っている「Zenly」というアプリがあって、これが「自分の位置情報をリアルタイムに共有する」というものなんですよ。今どこにいるかは勿論のこと、滞在時間まで分かるという。

僕としては全く意味が分からないアプリなんですけど、Z世代の人たちはこのアプリを使ってお互いにどこいるかを把握して合流するらしいんですよ。

こういうアプリが流行るということは、個人情報の開示に対する抵抗感はほぼ無いに等しいんでしょうね。

Zenly
出典:トレジャーアプリ

瀧元俊和氏既にこれだけのジェネレーションギャップが起きているわけですよ。それであれば許可制の元、検索データなんかをYahoo!やGoogleから提供してもらえれば理想的なんですけどね。

ただ、もしそういった時代が来たとして、データ分析が出来ない企業は生き残れなくなるという問題もありますね。レコメンドや最適化の精度が全然違うわけで、この波に乗れるかどうかが死活問題にもなると思います。

田内広平現にAmazonがそうじゃないですか。ショップ内には何でもあるし、レコメンドも優秀。最近だと実店舗も展開してきている状況で、このまま勢いよく全国展開なんてされたら、既存のスーパーなんかは絶対に太刀打ちできなくなりますからね。

瀧元俊和氏それはありますね。データ活用はオンラインからオフラインに切り替わっていくのは既に潮流ですし、各所で様々な試行錯誤が実施されてますからね。

データマーケティング人材について

田内
田内広平僕としては大手企業のデータ分析については、各社がもっと「研究者としての自覚」を持って欲しいと思いますけどね。

本来データ分析は目的を決めて、いくつかの仮説を出し、そして全ての仮説を検証してみる。仮に結果が失敗だったとしても原因を突き止めてナレッジとして蓄積する。

これが普通のデータ分析であり、対になるべきは検証実験なんです。だからデータ分析はある意味「研究」だと思うんですよね。

研究については、誰しもが学生時代に理科で似たようなことをやってきているわけじゃないですか。客観的な情報を整理し仮説を立て、それを検証して答えを探す。それなのに仕事になると何故かできない。

この「研究者としての自覚」が欠如しているから、データマーケティングの推進がいつまでもされなかったり、データの専門家が市場に生まれてこない所以だとも思うんですよね。
これは社員だけの問題ではなく、意思決定者である経営層の理解と覚悟の問題もあると思いますが。

瀧元俊和氏確かにそうですね。まさにこれが「大企業病」にもあたる部分であり、多くの社員が「安定志向」である弊害ですね。最近だとますますその傾向が強くなっていて、まさに各企業の幹部と会食した際に話題になるのは常に「後継者問題」なんですよ。

田内広平どういうことですか?

根付く安定志向

大学生が企業選択で重視するポイント
出典:nippon.com
瀧元俊和氏例えば、社内で聞いてみると「取締役にはなりたくない」「管理職までが理想」と回答する人が大半。つまり、取締役や社長を目指すような「野心家」が大手企業にそもそも応募してきていない状況なんですよ。

私の時代は「大手で出世すれば良い暮らしが出来る」という通説があって、当時であれば「大手企業で出世する」というのは大半の人の夢だったんですよ。しかし後の世代はバブルが崩壊して給料も下がれば、せっかく大手企業に入社したのに給料も上がらない。更に役員は大勢いる社員の中から一握りの人材しか成れない。

そうなると非現実的な出世を狙うよりも「プライベートを充実させた方が幸せ」という考え方に変わってしまう。結果的に野心家の若手は大手企業ではなく、自分で起業したり、自由度の高いベンチャー企業に入社して活躍する。そういう流れが主流になって、今では「野心家の多い中小企業」と「安定志向の多い大手企業」で両極端になってきていると思います。

結局、大手企業に入社する理由は「野心」からではなく「安定」の意味合いが強い。「ミスをせず、言われたことを淡々とこなす」「そうすれば安定した生活が保障される」といった思考が根底にあるわけです。ゆえに自分で解明して、研究して、実証して、どんどん成果を上げてみたいなマインドを持っている人は非常に少ないのが実情なんですよね。

田内広平挑戦には少なからず責任が伴いますし、「失敗というリスクを背負ってまでやらない」という保身の部分が強いんでしょうね。

瀧元俊和氏そうですね。言われたことやれば一定の給料も貰えて、安定して暮らしていける。それ以上のことは望んでない人が多くなってるというのは間違いない事実だと思います。

挑戦経験の乏しさ

田内
田内広平大手企業の全員がそうではないですけど、安定志向の強い担当者だと実験的な施策については基本的に嫌がるんですよね。

僕からすれば試してダメならやめればいい話ですし、今時検証ツールも沢山あってリスクも殆ど無いわけですよ。そういった説明を丹念にしても、やはり頑なに嫌がる姿勢を変えくれない。正直、こちらとしてもやりにくい部分はありますね。

瀧元俊和氏やはり成功体験に繋がるような挑戦経験が無いから、「挑戦して得られた喜び」や「仕事の楽しさ」みたいな部分まで行き着いていない。それよりも「失敗をしたくない」「責任を負いたくない」といった保身の考えがどうしても優先されてしまうんですよ。

田内広平そもそも大手企業に入社する社員に安定志向が多いわけですけど、対策などは打っているんですか?

瀧元俊和氏企業側としても「若手社員に色んな経験をさせたい」という想いから、新規事業プロジェクトを企画したりもしています。ただ実際のところ、若手社員の内心としては、それを望んでいなかったりする。

だから、最近では大手企業とベンチャー企業の協業が盛んだったり、ベンチャー企業を買収する大手企業が増えてきてるのだと思います。

田内広平大手企業とベンチャー企業では風土が違い過ぎて難しいんじゃないですかね。

瀧元俊和氏それはあります。それこそ将来有望なメンバーをベンチャー企業に出向させたりもしましたけど、やはり音を上げてしまう社員もいましたからね。要するに残業も無ければ、休暇も充実している大手企業の労働環境から、いきなり真逆のベンチャー企業になって耐えられないわけです。

田内広平そうなんですね。ちなみに入社何年目くらいの社員が出向対象なんですか。

瀧元俊和氏出向自体は挙手制になっていて、入社3年目ぐらいの方々が対象ですね。

田内広平3年の社会人経験があっても音を上げるんですね。僕からすれば「気合が足らない」としか言えないですし、自分で志願したなら「勝つまでやれよ」っていう。経営幹部候補なら尚のことだと思いますね。

瀧元俊和氏結局、本来データマーケティングに必要であろう素質の人材が、大手企業であるが故に来ない。それとはむしろ逆の安定志向の人たちが多数入ってきてる状況で、後継者問題についてもなかなか厳しいわけですよ。

田内広平そうなってくると文化自体を根本的に作り替える必要がありますね。

競争心の欠如

瀧元氏
瀧元俊和氏野心家が少なくなっている背景には、昨今の日本の教育環境など様々な問題があるんだと思います。

大学に行っても勉強しない。会社に入っても勉強しない。言われたことだけをやる。プライベートを充実させることに勤しむ。こういう人がどんどん増えているとすれば、日本全体の競争力がどんどん無くなっているという事でもありますからね。

一方で中国やベトナムの学生は真剣に勉強しているし、社会人になっても休み時間に語学勉強をする光景なんかは頻繁に見ます。これでは絶対に競争力で負けてしまうわけです。

田内広平印象論ですが、使えない人材が増えている気はしますね。

瀧元俊和氏野球選手の大谷君、フィギュアスケート選手の羽生君なんかを見ていて思うんですよ。自分の夢に向かって、寝る時間も惜しんで頑張ってきた人たちは世界でも通用すると。だから潜在能力的に日本人が劣っているわけじゃないんですよ。

でも、がむしゃらに頑張ってきた子たちに対して「すごいね」「別格だね」みたいな言葉で片付けてしまう人たち。危機感も無ければ、他人事のように済ませてしまう人たちで溢れている。こういった日本になっている事は非常にマズいと思います。

そういう意味ではPROJECT GROUPさんなんかは、社員同士が自らの主張をぶつけ合って議論していたり、社長である田内さんに対しても物申せるような環境は非常に良いと思います。

田内広平会社の在り方として「プロスポーツチーム」みたいな感じが本当は良いと思ってるんですよね。個々人がプロであることを自覚していて、足らないモノがあるなら自助努力でカバーする。

なんなら1軍と2軍に分かれて、成果の無い人材は2軍に降格させても良いと思いますし、それが本来の企業であると思いますけどね。

瀧元俊和氏そうですね。それこそ昔の大手企業には「派閥」という文化があったんですよ。要はその派閥の人が社長になれば派閥の全員が昇進、失脚すれば下ろされると。これは言い方を変えれば、全員が昇進のために切磋琢磨するようなチームだったわけですよ。

チーム同士で競い合って、勝ったチームがトップを取る。今こういった文化は全部否定されてますからね。大手企業にはどうにも出来ない、根が深い問題だと思います。そうなると、やはり常識を覆すのは皆さんのようなベンチャー企業なわけですからね。そこに期待を寄せるしかないし、日本そのものも変えてもらいたいですね。

田内広平そこは頑張っていきます。今日はありがとうございました。

瀧元俊和氏ありがとうございました。色々楽しいお話でした。

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