「自社商品が思うように売れない」「売り上げが伸びない」といった悩みは多くの企業が抱えています。その原因には需要問題、製品の品質、デザイン、価格設定やPR方法など多岐に考えられます。問題解決するにも、具体的にどのようなマーケティング戦略を立てれば良いかか分からない方は多いと思います。
そこで今回はマーケティング戦略においては欠かせない「4P分析」の基本概要、やり方から事例までを詳しく解説します。本記事では「4P分析テンプレート表」もご用意していますので、自社の4P分析にご活用いただければ幸いです。
4P分析とは
4P分析とは製品、値段、流通、広告宣伝など4つの要素を分析して、マーケティング戦略における道筋を立てる際に使われる手法の1つです。アメリカのマーケティング学者「E.J.マッカーシー」が提唱し、自社プロダクトを効率的に消費者に販売するための分析として知られています。
4P分析では「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(場所)」「Promotion(販売促進)」のマーケティングにおける4つのPで表し、“良質な製品”を“適正価格”で、“最適な場所”で“効率よく宣伝”することを目標に分析します。
4P分析の目的
4P分析はマーケティングミックスとも呼ばれる分析手法であり、4つの視点から市場を分析、自社プロダクトの強い見や課題点を明確にすることが目的です。
強みや課題が明確になることによって具体的な戦略を立案する際に重宝します。また製品の売れ行きが芳しくない時など、市場展開の戦略を考える際にも役立つ分析手法となっています。
4C分析・3C分析との違い
4P分析と名称が似ている手法として「4C分析」と「3C分析」があります。それぞれ関係性はありますが、意味合いは異なりますので混同しないようにしましょう。
4C分析とは企業視点から見た4P分析とは逆に、“顧客視点から見るマーケティング分析”です。基本的には4P分析を行う際にセットで4C分析を行いますので、4C分析の手法についても必須で押さえてくおくべきでしょう。
3C分析とは「市場・顧客」「競合」「自社」の3要素を分析するものとなっており、より俯瞰して市場を分析する際に使用するものです。いずれも戦略立案の際には重要なフレームワークとなりますので、是非3つとも押さえておきたいところです。
4P分析における4つの要素
ここでは4P分析における4つの要素を具体的に解説していきます。
改めますが、4P分析は製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販売促進(Promotion)の4つの言葉のPの頭文字から「4P分析」と呼ばれています。
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販売促進)
製品(Product)
- 製品自体の機能性の高さや特徴
- ブランドイメージと製品のデザイン性に一貫性があるか
- アフターケアを含めたサポート体制は万全かどうか
- ターゲティング層のニーズに合っているかどうか
製品(Products)は4P分析でも最も重要な要素です。
Productでは商品・サービスが消費者ニーズを満たしているか。品質・デザイン・機能性は需要に見合うものか。満足してもらえるアフターサービス(保証)が用意されているかを分析します。
商品の機能性や見た目、ブランド力やサービスなどに着目してアプローチしていきます。競合この際競合他社の製品やサービスと差別化できているかがポイントです。
価格(Price)
- ターゲット層が購入してくれる価格かどうか
- 同業他社の製品価格と比較して高いか安いかどうか
- 会社のブランド力や人気などを考慮して価格が適正かどうか
- 値引きや値下げをしても利益が得られるかどうか
- 商品と価格の整合性が取れて消費者が納得して購入してくれる価格かどうか
価格(Price)は販売価格が消費者が納得できる価格で、なおかつ企業が十分な利益を得られる値段を設定することが大切です。
必要に応じて値下げや割引など競合他社との差をつけることも重要ですが、適正な利益を得られる値段内に抑えることも重要です。またターゲット層が購入しやすい価格設定できるかも同時に分析しましょう。
販売促進(Promotion)
- 狙うターゲット層の年齢や性別や地域などによって宣伝媒体を変える
- 商品に合わせた宣伝方法を考える
- いつ、どこでどのように販売するかを考える
- 同業他社はどのような販売促進を取っているかを調べる
販売促進(Promotion)は、文字通りPR戦略における分析項目です。需要や顧客ニーズにマッチした優れた商品でも、プロモーションが上手くいかないと消費者にリーチすることなく売り上げは上がりません。
製品の販売数は、商品自体の品質や性能以上に販売促進の方法によって左右される場合もあります。ターゲット層よってはテレビやチラシなどのオフライン広告から、インターネットやSNSなどのオンライン広告に宣伝媒体を切り替える必要があります。逆もまた然りです。
販売経路(Place)
- ターゲット層の利便性にそった販売場所でないと販売数が伸びない
- ブランドのイメージに沿った場所で販売しないとちぐはぐな印象を持たれる
- 販売する店舗の雰囲気は商品に合っていないと、商品自体が魅力的に見えない
ターゲット層が購入しやすい流通経路や販売場所などを分析します。店舗で販売するならコンビニから百貨店、専門店などの選択肢あります。ブランドイメージや価格設定がその店舗と調和が取れており、ターゲット層にとって親しみのある場所を選ぶことが大切です。
また店舗で手に取り、あとあとオンラインで購入するといった消費行動を取る顧客も一定数存在します。店頭販売だけでなく別途オンラインストアを構えておくことは非常に重要です。自社サイトにて販売する他、Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングといった大手プラットフォームを活用することが効果的です。
4P分析のやり方
4P分析のやり方で重要なのが目標設定になります。分析によって目標達成ができるのかどうかや、自社に合ったマーケティングを選ぶことが大切です。生産力や製品力、販売力にどのくらいの目標を設定するかによって内容は大きく変化することもあります。
4P分析を行う流れとしては、まずニーズやトレンドといった市場の傾向を把握。自社と競合相手の製品サービスを比較し、自社の実績や市場における強みや品質価格などを分析することになります。
- 自社の製品の強み、競合の製品の特徴を分析する
- 価値やブランド力を分析して適切に価格設定する
- 製品に合わせてプロモーション方法を分析する
- 製品やターゲットを分析して販売経路を決める
自社の製品の強み、競合の製品の特徴を分析する
いくらプロモーションやマーケティング戦略に長けていても、製品自体に魅力がなければ最終的に売れません。
自社製品が他社製品と比較し、品質や設定価格、機能面で勝っているか。またアフターケアなどの保証は十分かなども分析する必要があります。この際、「他よりも高いが品質が抜群に良い」や「安くて美味い」など他社との違いを明確にして差別的戦略をとることも重要です。
まずは同業他社がどのような製品販売やサービスを行っているのか、自社製品を購入したお客様に対してアンケート調査を行うなどして情報収集することから始めてみても良いでしょう。市場と完全にミスマッチなのであれば、プロダクトそのものを抜本的に変える必要もあります。
価値やブランド力を分析して適切に価格設定する
製品の価格設定は会社のブランド力や人気度、認知度や希少性、コストなど、さまざまな視点からの分析が必要になります。
価格設定の方法としては、自社の売上を優先した「コスト重視」。競合他社の価格を参考にした「競合重視」。消費者の「これくらいなら買っても良い」と思われる値ごろ感を重視した「需要重視」などがあります。
その他にも地域や国別による価格設定や割引、値引きを考慮した価格設定なども重要な要素になります。高すぎず、安すぎない値段設定が何よりも大切です。また一度決めた価格でも顧客別や地域別、販売促進のため価格を変更することもあります。
製品に合わせてプロモーション方法を分析する
いくら製品が良質で適正価格であっても、人に認知してもらえなければ販売数は伸びません。そこで製品に合ったプロモーション方法を分析する必要があります。
「製品の良さを誰にどのように伝えるか」をまずは明確にしておくことが大切です。店舗があるなら従業員を使ったアプロ―チを行ったり、全世代に向けてならテレビやラジオを使うなど、若い世代向けならインターネットやSNSなどを活用する。
その他にも新聞や雑誌、看板やポスターなどプロモーション方法は様々ですが、予算やターゲティング層を取り込みやすい方法などを予め調査して製品のイメージにあった方法を選択すると良いでしょう。
製品やターゲットを分析して販売経路を決める
販売経路は商品が消費者の手に渡るまでの経路を表しており、店舗やインターネット、通販や直販、代理店販売なのか様々な方法があります。
例えば日用雑貨品は、コンビニエンスストアなど誰でも買えるようにする。高級ブランドではイメージを保持するため販売権を設定するなどがあります。製品の特徴や競合他社との比較などを考慮して、狙うターゲット層にとって最適な方法がどれかを決める必要があります。
優れた販売経路を決めることで、生産者は流通コストの削減や強固な販売網を作り上げることができます。また仲介に立つ業者の設備や販売経路も確保できるため、大きな成果を上げる可能性もあります。
4P分析のテンプレート表
E.J.マッカーシー氏が提唱した4P分析は、マーケティングの基本のフレームワークでミクロ環境分析に役に立ちます。例えば自社と他社の商品を4P分析テンプレートで比較するとどちらが優位なのか、差別化ができているか、競合他社の価格やプロモーションの比較などが一目でわかります。
テンプレートを用意しましたので、自社の事業戦略の細部、具体的な内容等を検討する際にご活用いただければ幸いです。
4P分析の事例
最後に実際に4P分析を行い製品や価格、流通やプロモーションに成功した企業事例をご紹介します。
以下4社は製品の品質やその保証、アフターケアやサービス、適正価格の設定、流通販路を確保してコストダウンを実現し、ブランドイメージを維持することに成功している企業になります。またプロモーション戦略もターゲティングや分析を徹底的に行なうことで認知度を広めることに成功しています。
- スターバックスの4P分析例
- セブンイレブンの4P分析例
- マクドナルドの4P分析例
スターバックスの4P分析例
世界的に有名はコーヒーショップのスターバックス。強気の価格設定を行っているのにも関わらず売上高を順調に伸ばしています。
スターバックスの4P分析について見ていきます。
- 国によってサイズや味を変えている。その国の国民が好みそうな商品を提供している
- 1杯は300円から500円とマックや缶コーヒーよりも割高だか、喫茶店やラウンジに比べて割安
- ターゲットは高めのコーヒーを好んで飲むビジネスマンなどに絞り、店舗の立地にもこだわりがある。店内禁煙とすわり心地のよいソファーで属性の良い顧客をリピーターとして確保している
- 広告宣伝は行わず、口コミ・店頭宣伝のみ、割引券やクーポン券も発行せずブランドイメージを保っている
セブンイレブンの4P分析例
出典:そうだ埼玉.com
店舗を見ない地域がないほど店舗数と売り上げを伸ばしているセブンイレブン。
セブンイレブンも4P分析によって成功戦略を確立した企業の1つです。続いてセブンイレブンの4P分析を見てみます。
- プライベートブランド製品を売り出すことで低価格で消費者に提供でき、会社の利益率もアップしている
- 会社のロゴデザインによってブランドイメージを強化することに成功した
- 商品の陳列やレイアウトは緻密な調査や分析によって決定されているため、消費者がより多くの品物を購入してしまう
- 地域によって店舗で販売するおでんなどのプライベートブランド食品の食べ物の味を変えている。徹底して商品の質の向上に注力している
マクドナルドの4P分析例
出典:栃ナビ!
世界的に有名なファストフードのマクドナルドも徹底した4P分析によって成功戦略を立てている企業の1つです。
マクドナルドの4P分析について見ていきます。
- プロモーションをテレビやネット、SNSなどを駆使して巨額な宣伝費を講じている
- ハッピーセットや室内パークなどで家族連れを取り込みリピーターを確保している
- 平日100円やクーポン券の発行などでお得感の出している
- 常にキャンペーンを行ったり人気アニメのコラボなど消費者を飽きさせない
- 国や地域によってサイズや価格、味などに変化をつけている
- はやい・安い・うまいを実現し他社との差別化を図っている
まとめ
4P分析とはより多くの商品を販売して、利益をあげるための色々な考え方のことです。4P分析は売れる仕組みを作るために重要な分析になります。
優れた製品に適正な価格を付けて、ターゲット層に合った場所で販売するとともに認知度を広げるための効果的な販売促進を行うことになります。
4P分析で成功戦略を立てられた企業は世界的な企業にも発展する可能性があります。まずは分析表のテンプレートなどを使用して分析を始めてみてはいかがでしょうか。